映画『ジミー、野を駆ける伝説』(原題:Jimmy’s Hall)は実在した活動家、
ジミー・グラルトンのストーリーです。
アイルランドが舞台になっています。
この映画の見どころと、アイルランドで上演された舞台版『Jimmy’s Hall』について書いていきます。
ジミー・グラルトンの生涯について気になる方は以下の記事をご覧ください。
映画『ジミー、野を駆ける伝説』
映画『ジミー、野を駆ける伝説』とは
イギリス、アイルランド、フランスによる合作で、James Gralton(Jimmy Gralton)という実在したアイルランド人活動家を描いた作品です。
1930年代のアイルランド・リートリム県(County Leitrim)が舞台になっています。
公開は2014年、日本での公開は2015年です。
監督はケン・ローチ、主演はバリー・ウォード。
あらすじ
1932年にアメリカからアイルランドの故郷に10年ぶりに帰ってきたジミー・グラルトン。
村人やかつての恋人ウーナとの再会を喜びます。
ジミーは母と穏やかに暮らすつもりでしたが、村の若者に頼まれて閉鎖されている集会所を再開することにしました。
この集会所とはかつてジミーが建てたもので、村の人々が詩や音楽といった芸術、ボクシング、ダンスなどを共に楽しみ自由に交流する場所です。
しかし教会の権力が強い中で、ジミー達の動きを快く思わない勢力と敵対することになっていきます。
集会所を中心に、自由を訴え権力に対抗するジミー・グラルトンの実話です。
ジミー、野を駆ける伝説(字幕版)『ジミー、野を駆ける伝説』の魅力
当時のアイルランドを垣間見ることができる
若者たちが道端でダンスをしているシーンがあったり、移動は馬車だったりと、服装を含め当時の暮らしぶりはこんな感じだったのかな…と想像することができます。
また、当時のカトリック教会は強い権力を持っていました。
なかなか日本人には想像がしにくいことかと思います。
アイルランドの地方の村の貧しい労働者と、聖職者の対立が描かれており、当時のアイルランドを垣間見ることができます。
アイルランドの音楽、ダンス
劇中、アイルランドの伝統ダンスを踊ったり音楽を演奏するシーンがあります。
女の子がシャン・ノースダンスというタップダンスのような踊りを披露するシーンなどはアイルランドらしくて見ていて楽しいです。
また、集会所で歌の練習をするシーンがあります。
ここで歌われている曲は『Siúil A Rún』(シューラルーン)というアイルランドの曲です。
歌詞はアイルランド語と英語が混ざっています。
戦地へ行く恋人を思う、女性の嘆きを歌っています。
さらに、ジャズに合わせて踊るシーンもありますが、神父様に怒られてしまいましたね…;;
実在の人物 ジミー・グラルトンを知ることができる
Jimmy Gralton(ジミー・グラルトン)が注目されたのは、まさにこの映画がきっかけだったようです。
アイルランドで生まれたアイルランド人が、いかにして追放されてしまったか。
追放されるまでのことが描かれています。
ちなみに、映画公開後のことになりますが、国外追放されたことに関して2016年にアイルランド大統領からグラルトン家に謝罪がありました。
実在したジミーの生涯については、以下の記事でまとめています。
感想
あの、、ジミー役の俳優さん、めちゃかっこいいです……(笑)
それは置いといて。
この映画は何度か見ましたが、あまりの不条理さになんとも表しがたい気持ちになります。
最後、捕まって車で移動しているときに駆け寄る若者たち…
ぽろぽろと涙が出ました…(:_;)
追放にいたるまでの流れはスピード感とともに描かれていて、あれよあれよという間にジミーが窮地に立たされる流れに引き込まれていきます。
実際に、回想シーンを除けば、約1年の内に起こった出来事なので、ジミーの体感としても、そんなテンポ感だったかもしれませんね。
上でも書きましたが、集会所でのシーンは本当に楽しそうで、特に音楽は田舎のアイルランド音楽という感じで高揚感があります。
舞台化された『Jimmy’s Hall』
2017年と2018年の夏にアイルランドの首都ダブリンにある国立劇場Abbey Theatreなどを始め、アイルランドの各都市で舞台化されました。
ジミー役はRichard Clements。
北アイルランド出身のミュージシャンで、劇中でピアノも弾いていました。(美しかった!)
かつての恋人 ウーナ役はLisa Lambe。
Celtic Womanの元メンバーで、現在はソロ活動をしながら、よくAbbeyの舞台に立っています。(歌声が本当にステキです!)
舞台版の魅力
ストーリー
ストーリーの構成は、映画版に近かったです。
ただし、10年前の回想シーンはなかったと記憶しています。
ジミーとウーナが月明かりに照らされながらダンスをするシーンは、その美しさに客席からため息が聞こえました。
音楽とダンス
舞台版はミュージカル風で、たびたび音楽の演奏や歌、ダンスがありました。
ジミーの「集会所」を間近で見ている感覚で、音楽のシーンは本当に楽しかったです。
というのも、出演者は役者でありながら、ミュージシャンやダンサーです。
また、村の若者・マリー・オキーフ役のSarah Madiganは、役者さんがメインなようですが、シャン・ノースダンスがとても上手かったです!ラストの魂の叫びもすごかった!
劇中で歌われていた曲は『A Stor Mo Chroí』、『The parting glass』など様々ありました。
最後まで目が離せない迫力の演技
音楽が楽しいという一方で、舞台の最後まですごい熱量で、理不尽な弾圧への怒り、悲しみが伝わり、観るたびに胸が苦しくなったのを覚えています。
特に最後のダンスで、オーディエンスが圧倒されていたのを感じました。
アビーでは出演者と話すこともできる
好きな女優さん(ミュージシャン)が出演していたこともあり、私は3度観に行きました。
Abbey Theatreでの上演後、出演者と話をする機会があったのですが、皆さんとても優しく、写真も撮っていただきました。(感動)
出演者の一人が「僕、池袋に行ったことがあるよ」と言っていて、いいチョイスだなと思ったことを覚えています(笑)
おわりに
この映画を観るとジミー・グラルトンという人物や当時のアイルランドの国内の状況が気になってきます。
アイルランドの人が、ジミーという存在を実際にどのようにとらえているのかも気になりますね。